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論文ダイジェスト


Local R&D support as a driver of network diversification: A cross-regional comparison in Japan

地方自治体R&D支援政策が取引ネットワークの多様化に果たす役割:地域間比較に基づく実証分析

(著者名)

Keisuke Takano(1), Hiroyuki Okamuro(2)

(所属)
  • (1) 筑波大学大学院システム情報工学研究科、帝国データバンク企業・経済高度実証研究センター
  • (2) 一橋大学経済学研究科、帝国データバンク企業・経済高度実証研究センター

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(要旨)

【はじめに】
市場での競争力・プレゼンスの向上や、技術的ショックへの適応の観点から、中小企業にとってはビジネスの地域的・産業的な多様化が重要になることがある。一方で、こうしたビジネスの多様化は、地方自治体による産業政策によって促進することが可能であろうか。この問いに答える為、本研究では、日本の同じ地方内にある3県の間で、2005-2016年の期間にそれぞれ独自に実施されたR&D助成政策が、中小企業のビジネス多様化に与えた影響を比較検証する。本研究のユニークな点は、取引ネットワークに基づくアウトカムに基づき、支援を受けた企業の産業的・地域的なビジネスの多様化を検証することである。

【分析の概要】
(1) 3県の特徴
本研究で分析対象とした3県(A-Cとする)の経済・産業的特徴及び、R&D助成制度の特徴は以下のようにまとめられる。
表1:経済・産業的特徴及び、R&D助成制度の特徴
これに加え、3県共通の注記すべき経済的特徴として、主要新幹線駅があることから、他地域への良好な交通アクセスがあることが挙げられる。
(2) アウトカム
分析時のアウトカムとして用いる企業の業績指標は、販売先地域・業界の多様化に関する指標であり、具体的には以下の4つである。
• 地域間多様化:都道府県間での販売先シェアの多様化度
• 地域内多様化:日本国内10地方内での地域間多様化度の加重和
• 産業間多様化:産業中分類間での販売先シェアの多様化度
• 産業内多様化:産業中分類内での産業間多様化度の加重和
販売先地域の多様化を例に指標のイメージを示すと、以下の図のようになる。
• 地域間多様化
図1:地域間多様化
• 地域内多様化
図2:地域内多様化

【結果】
全体的な傾向を俯瞰すると、R&D助成と販売先多様化との間の関係は部分的であることが明らかとなった。一方で、県Bの結果からは特定地方内(追加分析の結果から、主に首都圏内であることが分かっている)での販路多様化が、県Cの結果からは、特定の業界・地域に偏らない販路多様化が、それぞれ政策介入後に起きたことを示唆する結果が得られた。故に、今回の分析では、各県の経済・産業的特徴や、政策スキームの違いにより、政策介入の影響は異なることが示唆される結果が得られた。
表2:採択後経過年数別の助成と多様化との関係